富士山トレック・須走コース

2012/09/02


一生に一度は行っておきたい所でもトップクラスに入る場所、富士山。
散々二の足を踏んで来たが、今年ようやくトライすることにした。
やはり富士山は登る山で無く、観る山という一部の感想もあり。元々あまり頂上に拘らないトレッキングスタイルなので、恐らく1度しか行かない可能性も高い。だからこそ、当日の天候だったり、登山数の多い時期を外したりと様子を見ながらトライしたかったので、マイカー規制がなくなった9月頭に照準を合わせる。ただし駐車場問題は当日になってみないとわからないという不安がある…..
メンバーは、おなじみ4人で行く。
普段のトレックなら、気軽に人を誘うのだが、今回は特別。施設や整備という点では非常に恵まれた山ではあるが、やはり天候に対しては人間は無力。厳しい条件になった時の事を考えて、ある程度経験、装備がある事が重要。他にも、まずは自分が体力的にも余裕が無いため団体行動なりの気のまわしを減らしたい、少人数のフットワーク、環境適応能力も含めた上での事。
プランニング初期では、ギリギリまで天候をみて、ナイトトレッキングで日帰りを考えたけど、高山病の考慮、そしてせっかくだから山小屋で過ごしてみたいというのもあり、1泊2日のプランに変更した。
コースは須走+お鉢回り。理由は、樹林帯、砂走り、日の出の方角、温泉という魅力要素が多いこと。個人的には今回はせっかくなので高度にこだわりたい。3776mの剣ヶ峰>日の出の優先でいけたらと思う。
マイカー渋滞を考慮、駐車場に停めたいので早めにスタート。

06:00 メンバーをピックアップ。日本で唯一?の天候神社である高円寺氷川神社でお参り。今回のメンバーはTHE晴れ男が多いが、念には念をいれて。
….と虚しく小雨が降ってきた。雲行きも怪しい。地上でこれでは山はもっとコンディションが悪いという不安….
買い出しやら、ご飯やら渋滞で結局、現地には10時半ごろ。途中5合目前には路駐の列。これは結果わかったけど、前日の夜トレック組みのであった。やはりこの天気なのもあってかすんなりと駐車場に停めることができた。

まずは、高度順応を取るべく2時間休むことにする、準備したり仮眠したり。。

この日のために、各々ニューアイテムなどをひっさげて、いざ準備。
富士山須走口五合目、標高2000mをスタート…..の矢先に猛烈な雨…..当初12時スタートだが。プランを考えても明るいうちのトレックのリミットは14時スタート。
仕方無いので、ギリギリまで様子見ながら待機。
山小屋でご飯を食べることにする。

きのこパスタや、きのこうどんなどを食べる。
ぼちぼちと雨具を準備。早速、スパッツの登場。
14時ギリギリでスタートになった。他の人はとっくにスタートしているので、閑散として静かな雰囲気で樹林帯を歩く。

草木もやはりどこか雰囲気も違うけど、とにかく濃霧。ちょっと樹海ならではの重い雰囲気が、気を引き締めてくれる。1時間ちょい歩くとボチボチ森林限界が近くなる雰囲気。それにしても濃霧…

樹林帯を抜けて視野が広がったところでサプライズ、なんとこんな所に鹿がおりました。

いるというのは、知っていたけどまさかこんな所で見れるとは。濃霧と霧雨の中、はじめの驚きでテンションアップポイントでした。
スタートから1時間半、2450m新六合目到着。長田山荘で休憩。


ここでは水が300円。 10分ほどで出発。
やはりこの当たりから酸素が薄いのを身体で実感することができるマイペースでゆっくり歩けるのも1泊プランの良いところ。途中、外国人2人組みと出会い雑談。1人は横須賀基地から来たネイビーの人、ロナルド・レーガン(空母)に乗っているとのこと。そして、そこで初めてみた"オペレーション・トモダチ"ワッペン。

震災時"トモダチ作戦"として米軍が取り組んでいたものをTVでは知っていたものの、生でワッペンを見れるのは感激だった。もう1人は、すでにヘロヘロの友人でカリフォルニアで車関係の仕事しているようだった。2人は今日帰るそうで、7合目で折り返すそうだ。装備も軽装で、折り返すには時間が遅くなるで、あと2時間で真っ暗になることを伝えると足早に登っていった。
歩くこと35分で2700m、本六合目の瀬戸館。

焼印が200円、食堂もあって、外にはベンチもあるので、ゆっくり休憩。ウイダーなどで補給して、本日の宿、7合目を目指す。
出発早々、小雨が降ってくる。7合目までは60分、ゆっくりでいいものの天気は悪くなる一方。装備もレインウエアにそれぞれ変更。雨のせいもあってかなり暗くなってきた、ライト無しでギリギリ。山小屋が見えてからは、雨も本降りになってきた。流石に寒い。。
高度3,200m七合目太陽館に到着。先についていた、さっきの外国人の1人は山小屋で凍えそうだった、それにしてももう暗いけど本当に折り返せるのだろうか….山小屋は濡れた人々と避難している人でごった返しパニック状態。
山小屋のチェックインもわけわからないうちに進み、先に到着した2名と合流。
山小屋の夕飯は、順番に呼ばれるらしい。小屋に入ると薄暗い室内で、寝床というよりも押し入れにすし詰め状態。すでに廊下も歩く場所が無いくらいに人がいるし、すでに寝ている人も。勝手を知らない人にとっては、何がなんだか異空間過ぎて状況を理解するのに時間がかかった。

暖房も、風呂も無い、着替える場所も無いので、装備はビニール袋に押し込んで、自分の寝床にたどり着く。すでに布団の上に寝袋が置かれている。
「飲食禁止、装備はビニールから出すな」そんな無茶苦茶な….まぁどこまで忠実だったかはさだかではありませんが。山小屋+悪天候+夜間という悪条件。濡れた身体は、冷えるので寒さとの戦い。着替えと明日の準備を終わらせる必要がある。
山小屋では、24時頃出発する人、4時頃出発するひと、6時頃出発と大きく分かれているが、ごちゃまぜなのでご飯終わってからだと静か過ぎるし、起きてから準備すると忘れものもあるので、起きたらすぐに出発できるようにするのが定説だとのこと。
到着して20分後には呼ばれて食堂へ。同時に35名くらいがご飯を食べられる。

06:40夕飯はハンバーグと豚汁、ご飯。なんと飯と豚汁はおかわり自由。

冷え切った身体と疲れには温かい豚汁がしみる。最高に美味い、しばらく飯と豚汁だけで身体を温める。
途中、食堂で一悶着。素泊まりの人が、宿にお湯を貰おうとしている、どうやら中国系の人達。もちろんタダではない、宿の女将さんがシビアに代金をどうするか内輪モメ。「あんたのは大きいから、300円じゃ足らん」とか、宿のスタッフは20代半ばの大学生くらいなので、面倒くさそうに、なんども金額を決める話し合い。うちらに取ってはどうでもいいような、話題なのでせっかく幸福感に包まれた豚汁も冷える勢い。感じ悪いなぁ。。。と思いながらもようやく落ち着いた。
この理由が明らかになった。
残念ながらの雨ではあったが、どうやら2週間ぶりの雨だったらしく、山小屋では死活問題。水が一番重要なので、雨が降らなければ食事もお茶も、商売(食事)も出せない。それくらい水は貴重だということを聞かされた。「今日雨降らなかったらこの温かいお茶も出せなかったかも」という。
水分の装備は十分だったので、天気に関しては自分らに取って迷惑この上なのが正直なところ…..
満腹で、食堂を出ると元の世界へ、暗闇に人がビッシリ….廊下で良く寝られるな….
07:15ご飯も終わると後はやることがない、寝るだけだ。

3時間くらいはグダグダと過ごす。問題は明日の天気、山小屋内では携帯の電波がままならないので、外にでて情報収集。相変わらず霧雨は降り続いている。
この時間は、ちょうどナイトトレックで頂上御来光組が登り続けている。天気予報を確認するが、どうやら天候の回復は期待できない。明日の15時過ぎには、かなり降り始めるようだ。
本来であれば朝4時に起きて出発予定だが、ん〜天候次第では下山も視野に入ってきた。時間を逆算しても、朝9時に出発しなければならない。一応、明日起きた段階で判断することにした。
24時頃、第一陣が出発するようで、山小屋はバタバタ。アラームは鳴るわで起きてしまう。雨は止んでいない、というよりむしろ普通に降っている。
30分ほどでまた静寂。
2時頃、なにやら頭もとでシューシューと音がしてザワついている。ふと起きると、どうやら女性が気分悪そうだ。酸素スプレーをガンガン使っている。友人が介抱しているが、そういえば夕食あたりから、改善していないようだ。これが高山病というもの。
高山病は登っている時だけでなく、むしろ山小屋で起きるケースも多いことは事前に知っていたが。確かに室内で人が密集していると、酸素不足になる。タダでさえ押し入れに寿司詰め状態だし、寝ると呼吸数が少なくなるので、なおさら酸素不足になる。この事前の情報は納得できるものだった。
しかし、酸素吸入を使い続けているので、心配になったので声をかけると。全然症状が改善されないとのこと。酸素吸入の過多にもリスクがあるので、やり過ぎも良くないこと、そして酸素吸入では一瞬だけ楽になるだけで、高山病が改善されるわけではない事を伝えて、高度を下げることをオススメする。
次第に吐き気と意識も朦朧としてきたので山小屋のスタッフに相談することにした。
食堂に連れて行き、同じパーティー5名ほどを起こす。状況を説明している打ちにも、体調不良は悪化するばかりの….
自身もリフレッシュするため一度外へでて一息。
先程の様子を見に行くと、どうやらエマージェンシーコールをして救助に来て貰うことになったよう。
我々も今回、万全な体制を確保するために低めの7合目で1泊したが、やはり起きてしまうときは起きてしまうもの。少なからず自分も、初期症状があったため不安が増した。
うちのメンバーも、もう1人初期症状がでて辛そうにしていた、寝ているよりも立っている方が楽だとのこと。グダグタと過ごし、4時すぎ。朝食の時間、一気に人が起き始める。
しゃけ定食だが、食欲はイマイチ。

当初の予定では出発だが、自分とメンバーの体調、天気を含め5時出発は見送ることにした。
雨は止んでいない。デッドラインは9時。
すでに大半が出発しているので、やっと小屋の全貌が把握できる

08:30 最終的な判断をメンバーで会議。
「頂上を目指す」で決定、理由は"せっかくなので"(笑)
まぁ単純に雨装備も各自問題なし、安心材料としては風がそこまで強くなかったこと。そして雷が無かったこと。剣ヶ峰とお鉢巡りは時間的に難しいが、須走山頂を目指すことにした。
09:20 準備をして出発。
ウォーミングアップするよりも、動いてしまった方が体温が下がらないのでゆっくりと歩く。

10:20 本7合目3,200m到着。
休憩は軽く、8合目へ。若干風があるし、朝というのもあってとにかく寒い。身体は良いとしても手がシンドイ。グローブがあるだけマシだが、防水グローブを買うと決心した。

11:40 本8合目3,400m到着

山小屋「江戸屋」にて大休憩とご飯。ズブ濡れ状態で寒かったが、小屋には囲炉裏。グローブを乾かせたのは良かった。

朝食欲無かったのが嘘のように腹減り、カレーを食べつつラーメンをシェア。
気分も上々になったところで外を見ると。なんと青空と雲海が見えるじゃないですか!!!!

富士山を登ってから初めての空!さすがに感動しましたね。
隙間から河口湖や、相模湾が見えてやっと写真らしい写真が撮れた。

12:10 出発。 気温も少しあがり、風も心地よい。
しばらく天気は持ちそうだ。しかし流石に8合目を過ぎてから酸素濃度が低いのを身体で実感できる。やはり3,000mを超えるとこんな世界なんか….
まぁ、うっすらと頭痛はありつつも天気のおかげでモチベーションは保てた。

12:35 8.5合目3,450m到着 御来光館(ここも宿の候補だった)

さて、道も岩が多くなり息も上がりやすい。しかし頂上まで見えてきたのでここまで来たら気合いのみ。

13:30 9合目3,600m到着
シンドイ!それに、また雨も再開しつつある…..とにも、無理矢理お腹にエネルギーをいれて頂上を目指す。
スケジュール的にはかなりギリギリ、若干遅れているので日暮れが心配。メンバー2人は、余裕があるようで関心。あまりに元気なので、他のメンバーの荷物を2人分背負っていけるかというなんともヘビーなトライ。でも余裕だったみたい、そのまま頂上へ向かっていった。

雨脚は強くなる一方の中。

14:40 須走口 富士山頂上浅間大社奥宮

猛烈な雨で山頂は迎えてくれました。時間的には結構ヤバイ…しかし寒さもあり、一端山小屋で温かいものとトイレ休憩をとる。

さすがに時間ギリギリなので頂上に人はほとんどいない。
15:10 せっかくなので火口付近をのぞいて下山路へ

須走名物の砂走り。途中雨も霧雨に変わり若干雲の隙間から下界を見ることができた。

17:10 一泊した山小屋 7合目まで降りた。
たった2時間で….
陽も落ちて来ているので先を急ぐ。とはいえ、自分以外のメンバーは早い早い。まぁ下山とはいえ膝に負担もかかるし、マイペースでいく。
17:30 6合目を過ぎたあたりから暗くなり始めるし、天気は小雨に変わった。
先に行った他のメンバー全員は、もう見えなくなった。単独の登山ってこんな感じかなぁという精神状態を体験しつつ、ブラックアウトも近いので急がないと….
17:50 砂払い5合目 最後の山小屋
メンバーが待っていてくれたが、自分遅いので休憩無しで進む。
辺りはもう暗い、そしてメンバーにまた抜かされる(笑)日没前だが樹林帯なのもあって、もうヘッドライトがあっても良いくらいの明るさだがギリギリ肉眼で進む。
やはり暗闇で1人だといくらゴール間近でも精神的な不安がよぎる、電波もままならないこの暗い樹林帯で転んで怪我したら….まぁ怪我程度ならいいけど、頭打ったり、大量出血の怪我とか一刻を争う事態になったら助からないな….とか。
始めから1人なのと、途中で単独になるとはで、心構えが違うから切り替えないとなぁ。でも待ってもらってたら悪いなぁと急ぎ足に…というリスクを増すばかり。良くないな
18:30 須走口下山

そして10分後に完全にブラックアウト。
その前に下山できて良かった….ホッ。
温泉の時間もあるので急々と車へ向かい。着替えて、温泉へ。まぁ途中しょーもないサプライズイベントがあったけど、省略。
無論、これだけの内容なので装備やプランニングも教訓になったが、やはり今回は高山病、グループと単独トレックのメリット・デメリットについて深く考えられることが多かった。
もちろんメリットは、楽しみを共有、助け合い、励まし合い。写真の撮り合い。そしてコストダウン。キリがないほど素晴らしいものだか、今回はマイナス面に注視してみよう。
このレベルのトレックとなるとお互いの体力や体調、危機管理、目的、意識などの違いがはっきりと出てくる。
それは1つのスポーツとしてみればどちらが良い悪いというわけではないが、違いにより様々なリスクが高まったりストレスを感じたりする可能性があると思う。
今から言うのはあくまで、パーティーから遅れ単独になってしまった立場からのをわがまま身勝手な視点からの意見です。
できれば、視野から消えない範囲でいて欲しかった。
特に初めて登る山やコースの場合は特にという意味ですが、自分のペースは大切なのはわかるけど。グループトレックを各々がどう捉えているのか・・・その考えの度合いによっても違うとは思う。先組には先組の考えもあっただろうけど、前述の通り一方的な視点からの見解です。
無論、今パーティーのメンバーが離れたメンバーのことは一切考えていないというわけではないです。
随所で気に掛けてくれていたし、それを思わないような人とは元々一緒にパーティーを組まないので。
まぁ、ちょっと漠然としたレビューになってしまったので、具体的な要素を並べながらまとめると。
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<単独になっても安心材料になったもの>
・携帯がドコモ!!!
・地図、ライト、コンパス、予備食、コンロ、
 予備バッテリーなど装備があった
・途中からおかれている状況や境遇を分析して気が紛れた
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<単独になった立場からの不安要素、危険要素>
・皆に気を遣わせてしまっているという気負い
・気負いからオーバーペースになって危険増
・もしもの場合…という精神的ネガティブ
・ちょっと待って…というストレス
・大げさだけど最悪なケースの装備(テント、防寒着、無線など)が不十分
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<状況的なネガティブ要素>
・日没が近い、日没時間はあくまで目安、山陰だとなおさら早い
・雨、濃霧など天候による足場悪化
・他に登山者がいない(少ない)後ろには全然人影がなかった。
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<考えられる対応>(極論で例えるなら)
・天候、体力、経験、体調を含めた登山計画
・単独にならないパーティーのグループ分け2−2になるとか。
・完全単独宣言をして関係を明確にしてしまう。
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こんなところでしょうか。
高山病に関しては、運動神経とか、経験値とか男女はあまり関係なく、
『どんな人でもなる時はなってしまう』
これもグループ内で、当日の体調や体質などによって違うので、
『原則、なってしまう時を考える』のが重要。
怖いからと言ってたら2000m以上はトライできないので、なってしまわないようなプラン、なってしまった時の判断をきちんと考えていれば、安全な範囲でトライできると思う。
定番かもしれないのは、富士山トライに一番重要なものは、
『下山する勇気』 これも納得。
本当に装備、体調、天気、経験値、精神面と収穫は多かった。
ただ、自分としても足りないものばかりだし、精神的に冷静になりきれなかった部分では本当に反省しなければならない。
無事に登頂、下山できたのは仲間のおかげではあるが、
当時、その場で、いつものニュアンスで使う「ナイストレッ・・・・」というのは心から思え無かったのは正直なところ。
ゴメンナサイ。
まだまだ未熟です、経験積まないと。
で、結局1回くらいしか行かないかなぁと思っていた富士山も消化不良も多いので、天気の良い日にできればリベンジできればなぁというのが心境です。
今回のベストショットはTKZ氏のこの1枚

※記事内の掲載写真はメンバーからお借りしたものも含みます。